「城主が自らの領地で完結させる、究極の『シングルエステート』ウイスキー」
スコットランド最大のウイスキー生産地、スペイサイド地方。数多くの有名蒸留所がひしめくこの地に、2014年、ある名家が約2世紀ぶりにウイスキー造りの表舞台へと帰還しました。
それが、1546年からこの地で城を構えるマクファーソン・グラント家が立ち上げた「バリンダロッホ(BALLINDALLOCH)蒸留所」です。
ウイスキー造りの効率化が進む現代において、彼らが目指したのは19世紀の伝統への回帰。大麦の栽培から仕込み水、さらにはウイスキー造りで出た麦芽の搾りかすを自らの農園の牛に与えることまで、すべてのサイクルを自らの敷地(エステート)内で完結させるスコットランド初の「シングルエステート・ディスティラリー」として、世界中から熱い視線を集めています。
今回は、伝統の木製ワームタブが育む究極の自給自足ウイスキー「バリンダロッホ蒸留所」の歴史と製法の秘密について、県外から帰省中の長男との晩酌風景とともにお届けします。
我が家の晩酌ノオト:長男と語る、スペイサイドの城主の夢
週末の夜。県外の大学から帰省している長男が、夕食後の一杯を求めてリビングのテーブルへやってきました。
バリンダロッホ蒸留所の特徴と歴史
1546年から続く名家と、19世紀の伝統への回帰
バリンダロッホ蒸留所を所有するマクファーソン・グラント家は、1546年からこの地でバリンダロッホ城に暮らし続けている名家です。かつては名酒「クラガンモア蒸留所」の設立にも関わった歴史を持つ同家ですが、2014年、ついに自らの名を冠した蒸留所を敷地内の古い農場建物を改築してオープンさせました。
コンピューター制御の最新設備が主流となる中、彼らはあえて手動のバルブ操作や木製の設備にこだわり、19世紀の伝統的なウイスキー造りを現代に蘇らせました。
究極の自給自足「シングルエステート」
バリンダロッホの最大の哲学は、テロワール(風土)を100%グラスに注ぎ込むことです。
- 大麦:エステート(広大な自社領地)内で栽培された大麦のみを使用。
- 水:敷地内に湧き出る「ガーリンの森」の清らかな湧き水。
- 循環:糖化を終えた麦芽の搾りかす(ドラフ)やポットエール(廃液)は、敷地内で飼育するスコットランド最古の歴史を持つアバディーン・アンガス牛の群れの飼料として還元されます。
まさに、土地の恵みがウイスキーとなり、再び土地へと還っていく美しい循環(サステナビリティ)を実現しています。
木製ワームタブが生む「力強くフルーティー」な酒質
製造工程での大きな特徴は、冷却装置に昔ながらの「木製ワームタブ(屋外に設置された巨大な樽の中に、蛇管を這わせて冷却する装置)」を採用していることです。
オレゴンパイン製のウォッシュバック(発酵槽)で長時間発酵させたフルーティーなもろみを蒸留し、あえて銅との接触が少ないワームタブで冷却することで、スペイサイドらしい華やかな果実味の中に、どっしりとした重厚感(ミーティさ)を併せ持つ、非常に複雑で飲みごたえのある原酒が生み出されています。
バリンダロッホを代表する傑作ボトル
「最低でも8年は熟成させないとリリースしない」という強いこだわりを持ち、近年ようやく一般市場に登場し始めた代表的なラインナップをご紹介します。
1.バリンダロッホ ヴィンテージリリース(Vintage Release)
蒸留所が満を持してリリースしたシングルモルト。たとえば「ヴィンテージ2015」のように、蒸留年を冠してリリースされます。
グラスに注ぐと、青リンゴや黄桃、パイナップルのような非常にフレッシュで鮮やかな果実のアロマが立ち上がります。口に含むとハチミツの甘さとバニラのコクが広がり、ワームタブ由来のしっかりとしたボディが全体を支える、完成度の高い傑作です。
2.バリンダロッホ メリーパーク ブレンデッドモルト
バリンダロッホの原酒に、ごく僅かな他のシングルモルトをブレンドした(いわゆるティースプーンモルト)日本市場専売商品。バリンダロッホのフレッシュでフローラルな魅力を気軽に楽しんでほしいという思いから開発されました。モルトの旨味をしっかりと感じられるため、贅沢なハイボールに最適な1本です。
まとめ:領地の恵みが織りなす、珠玉のひととき

大地の栄養を吸い上げた大麦が、清らかな湧き水と職人の手によって黄金色の液体へと変わり、再び大地を潤す。
明日もまた、素晴らしいウイスキーとの出会いがありますように。乾杯。
