「好きになるか、嫌いになるか(You love it or you hate it)」
スコットランド・アイラ島のウイスキーを語る上で、これほどまでに強烈な個性を持ち、世界中の飲み手を二分する蒸留所は他にありません。正露丸や病院の消毒液に例えられる強烈なヨード香(薬品香)を放ちながら、「アイラの王」として君臨し続けるのが「ラフロイグ(LAPHROAIG)蒸留所」です。
一度ハマれば二度と抜け出せないその強烈なピートスモークの奥には、海風の塩気と、驚くほどまろやかでフルーティーな甘みが隠されています。あのイギリス王室をも虜にしたこの唯一無二の味わいは、どのようにして生み出されているのか。
今回は、アイラ島南部の美しい入り江に佇むラフロイグ蒸留所の歴史と、その孤高の製法の秘密について、我が家の長男との晩酌風景とともにお届けします。
我が家の晩酌ノオト:長男と語る、王室を虜にした「アイラの王」
週末の夜。夕食も終わり、リビングのテーブルに白いラベルが眩しい「ラフロイグ 10年」を置きました。グラスにトクトクと注ぐと、すぐに部屋中に独特の香りが広がります。そこへ長男がやってきて、鼻をクンクンとさせながら向かいに座りました。
ラフロイグ蒸留所の特徴と歴史
広い入り江の美しい窪地
ラフロイグ蒸留所は1815年、ドナルドとアレクサンダーのジョンストン兄弟によって、アイラ島南部の海岸沿いに設立されました。
ゲール語で「広い入り江の美しい窪地」を意味するその名の通り、蒸留所の目の前には大西洋の荒波が打ち寄せる美しい入り江が広がっています。この海に面した熟成庫で、強烈な海風と潮のしぶきを浴びながら眠りにつくことで、ラフロイグ特有の「磯の香り(ヨード香)」が原酒に深く刻み込まれていくのです。
伝統の「フロアモルティング」を守り抜く
現在、スコットランドの多くの蒸留所が専門業者から麦芽(モルト)を買い付けていますが、ラフロイグは今でも自社で麦芽作りを行う「フロアモルティング」を一部(全体の15〜20%程度)で継続しています。
コンクリートの床に大麦を広げ、職人が手作業でシャベルを使ってひっくり返す過酷な重労働。この昔ながらの製法を守り、自社のキルン(乾燥塔)で独自のピートの煙をたっぷりと焚き込めることが、ラフロイグの強烈な個性の源泉となっています。
ラフロイグだけの特別なピート(泥炭)
あの「正露丸」や「消毒液」と表現される独特の香りは、蒸留所が所有する「グレンマクリー湿原」から切り出されるピートに秘密があります。
アイラ島の他のピートに比べ、この湿原のピートは水分を多く含んだミズゴケやヘザー(ヒースの花)、そして海藻類が独特のバランスで堆積しています。これを低温でじっくりと燃やして麦芽を燻すことで、他に類を見ない薬品のようなヨード香と、スパイシーな煙たさが生まれるのです。
チャールズ国王が愛した「王室御用達(ロイヤルワラント)」
ラフロイグを語る上で欠かせないのが、イギリス王室との深い繋がりです。
愛飲家であったチャールズ国王(当時は皇太子)は、1994年に自ら蒸留所を訪問し、シングルモルトウイスキーとしては初となる「王室御用達(ロイヤルワラント)」を授与しました。現在でもボトルの上部には、その証である「平和の象徴の3本のダチョウの羽(プリンス・オブ・ウェールズの紋章)」が誇らしげに輝いています。
味わいの核:「ラフロイグ 10年」
ラフロイグの強烈な個性と、王室を虜にした気品を最もダイレクトに味わえるのが、スタンダードボトルである「10年」です。
- アルコール度数:40%
- 香り:グラスに注いだ瞬間、海藻や潮風を思わせる強烈なヨード香と、焚き火の煙が爆発的に広がります。しかし、その強烈なスモークの奥深くには、バーボン樽由来のバニラや甘いハチミツの香りがしっかりと隠れています。
- 味わい:口当たりは意外なほどオイリーで滑らか。舌をピリッとさせるスパイシーな煙たさの直後に、麦芽のふくよかな甘みと、バニラのクリーミーなコクが押し寄せます。「臭いのに甘い」という驚きのコントラストが、飲み手を惹きつけてやみません。
- 余韻:消毒液を思わせるドライなヨード香と、海の塩気、そしてピートの煙がいつまでも長く、深く舌に残り続けます。
ラフロイグ10年本音レビュー!正露丸の香りと鯛の雲丹醤油が織りなす至高ペアリング
「アイラの王」として君臨するラフロイグ10年を宅飲み本音レビュー!正露丸や消毒液に例えられる強烈なヨード香の秘密や、煙の奥にある甘美な味わいを徹底解説。瀬戸内産の鯛のお刺身に濃厚な「雲丹醤油」を合わせる究極の海鮮ペアリングを、妻との驚きの晩酌風景とともにお届けします。
晩酌ノオトまとめ

「You love it or you hate it」
自らそう名乗るほどに強烈な個性を持つラフロイグですが、その歴史を紐解けば、美しい入り江の自然と、昔ながらの手作業によるフロアモルティング、そして独自のピートに対する異常なまでのこだわりが見えてきます。
グラスにラフロイグ10年を注ぎ、その強烈でありながらもどこか安心するヨード香に身を委ねながら、静かに更けゆく夜を楽しもうと思います。明日もまた、素晴らしいウイスキーとの出会いがありますように。乾杯。
