バーボンウイスキーといえば、力強くてパンチのある無骨なお酒。そんなイメージを鮮やかに覆す、華やかでエレガントなウイスキーを生み出し続ける蒸留所があります。
それが、美しい4輪の深紅のバラをシンボルに掲げる「フォアローゼス(Four Roses)蒸留所」です。
ボトルに描かれたバラの裏には、ある青年の情熱的なプロポーズにまつわるロマンチックな誕生秘話が隠されています。そして、そのドラマチックな歴史に負けないほどの「緻密な原酒造り」へのこだわりが、このウイスキーを類まれな名酒へと押し上げています。
今回は、アメリカンウイスキーの常識を変える気品あふれる「薔薇のバーボン」の歴史と秘密について、我が家の次男との晩酌風景とともにお届けします。
我が家の晩酌ノオト:次男と語る、深紅のバラに隠されたロマンス
週末の夜。夕食も終わり、ダイニングテーブルに美しいバラのラベルのボトルを出していると、次男がグラスを持ってやってきました。
フォアローゼス蒸留所の特徴と歴史
情熱的なプロポーズから生まれたブランド
1888年にポール・ジョーンズ・ジュニアによって商標登録されたフォアローゼス。その名前の由来は、先ほどのロマンチックなプロポーズのエピソードにあります。
禁酒法時代には「医薬用ウイスキー」として製造を許可されたわずか6つの蒸留所のうちの1つとなり、その命脈を保ちました。その後、アメリカ国内では一時期ブレンド用の安価なウイスキーとして流通してしまった不遇の時代もありましたが、日本では高品質なストレートバーボンとして愛され続け、現在では再び本国アメリカでも高い評価と人気を取り戻しています。
ケンタッキーの景観に映える「スパニッシュ・ミッション・スタイル」
フォアローゼス蒸留所の建物は、ケンタッキー州の他の蒸留所とは一線を画す非常にユニークな外観をしています。
1910年に建てられたこの蒸留所は、クリーム色の壁に赤い瓦屋根という「スパニッシュ・ミッション・スタイル(スペインの伝道所風)」の建築様式を取り入れています。その美しく歴史的な建造物は、アメリカの国家歴史登録財にも指定されており、薔薇のウイスキーを生み出すのにふさわしい優雅な佇まいを見せています。
究極のブレンドを生む「10種類の原酒レシピ」
フォアローゼス最大の特徴であり、他のバーボン蒸留所が真似できないのが、「10種類の異なる原酒」を造り分けていることです。
- 2種類のマッシュビル(穀物の配合率):<トウモロコシが多めのまろやかなレシピ(E)と、ライ麦が多めのスパイシーなレシピ(B)。/li>
- 5種類のオリジナル酵母(イースト):フルーティーな「V」、スパイシーな「K」、リッチな果実味の「O」、フローラルな「Q」、ハーブ香の「F」。
この2×5の組み合わせにより、全く個性の異なる10種類の原酒を生み出し、これらを芸術的なバランスでブレンドすることで、あの花や果実を思わせる複雑で華やかな香りが完成するのです。
温度変化を抑える「平屋建ての熟成庫」
一般的なバーボンの熟成庫は、何層にも重なった高層のラック(棚)式になっており、上段と下段で温度差を利用して熟成を促します。しかし、フォアローゼスの熟成庫は「平屋建て(1階建て)」です。
あえて平屋建てにすることで、樽が置かれる環境の温度差を最小限に抑え、原酒を急激に変化させることなく、時間をかけてゆっくりと優しく熟成させています。これが、フォアローゼスの滑らかでエレガントな口当たりを生み出す大きな要因となっています。
味わいの核:「フォアローゼス(イエローラベル)」
10種類の原酒を絶妙なバランスでブレンドして生み出される、ブランドの顔とも言えるスタンダードボトル(通称:イエローラベル)です。
- アルコール度数:40%
- 香り:グラスに注ぐと、一般的なバーボン特有の接着剤っぽさ(エステリーさ)は少なく、洋梨やリンゴ、そしてバラの花を思わせる非常に華やかでフローラルな香りが立ち上がります。奥からはちみつやバニラの甘いアロマが優しく香ります。
- 味わい:口当たりは驚くほど滑らかでまろやか。トウモロコシ由来のしっかりとした甘みと、プラムやチェリーのようなフルーティーな果実味が口いっぱいに広がります。アルコールのツンとした刺激を感じさせません。
- 余韻:フローラルな香りの余韻と、バニラの優しい甘みが心地よく続きます。スッキリとしていてキレが良く、次の一口を自然と誘う軽やかなフィニッシュです。
フォアローゼス本音レビュー!華やかなバーボンの特徴とチョコ&コーヒーの至高ペアリング
華やかなバラのラベルで知られるバーボン「フォアローゼス(イエロー)」を宅飲み本音レビュー!プロポーズから生まれたロマンチックな誕生秘話や、フルーティーで滑らかな味わいの特徴を徹底解説します。次男が買ってきた「チョコ&コーヒービスケット」と合わせる至高のペアリング風景とともにお届けします。
晩酌ノオトまとめ

無骨なバーボンの世界において、ひときわ優雅でロマンチックな異彩を放つフォアローゼス蒸留所。
プロポーズの伝説から名付けられた美しい名前の裏には、10種類の原酒を造り分け、平屋建ての熟成庫でゆっくりと育てるという、徹底した品質へのこだわりと職人たちの情熱が隠されていました。
グラスにほんの少しだけ残ったフォアローゼスの氷をカランと鳴らし、その華やかで優しいバラの香りに身を委ねながら、静かに更けゆく夜を楽しもうと思います。明日もまた、素晴らしいウイスキーとの出会いがありますように。乾杯。
