「余り物には福がある」とはよく言ったものですが、ウイスキーの世界において、その「余り物」が奇跡のような傑作を生み出すことがあります。
スコットランド・アラン島に拠点を置くアラン蒸留所。その豊かな果実味で多くのファンを魅了するこの蒸留所が、新しい蒸留所長スチュワート・ボウマン氏のもとでスタートさせた限定シリーズ「シグネチャーシリーズ」の記念すべき第1弾が、今回ご紹介する「アラン レムナント レネゲード(Arran Remnant Renegade)」です。
「レムナント(Remnant)」とは、残り物や端切れという意味。ウイスキーをボトリングする際、樽からどうしても少しだけ余ってしまう貴重な原酒たちを、アラン蒸留所は大切に専用の樽(レムナント・カスク)に集め、熟成を続けていました。1997年から2017年までの多種多様なヴィンテージの原酒が複雑に絡み合ったこのボトルは、まさに「アランの歴史の集大成」とも呼べる特別な味わいを持っています。
今回は、妻が買ってきてくれたカスタードたっぷりの「シュークリーム」に、この歴史が詰まった複雑で甘美なアランを合わせる、驚きと笑顔に満ちた週末の晩酌風景をお届けします。
我が家の晩酌ノオト:妻のシュークリームと、奇跡の「残り物」ウイスキー
週末の夜。夕食の片付けも終わり、ほっと一息ついた頃合いに、妻が嬉しそうにケーキ屋さんの箱を持ってリビングへやってきました。
テイスティング・レポート

アラン蒸留所の歴史を語る上で欠かせない「レムナント・カスク(余剰原酒を集めた樽)」を中心に、元シェリー樽や元バーボン樽など多彩な原酒(1997年〜2017年蒸留)をブレンドしたシグネチャーシリーズ第1弾。アルコール度数は46%です。
香り(Nose)
グラスに注ぐと、まずはアランの代名詞である青リンゴや洋梨、そして熟したバナナのような濃厚なフルーツのアロマが立ち上がります。続いて、バーボン樽由来のバニラ、ハチミツ、そして微かにミントやリコリス(甘草)のようなハーブのニュアンスが複雑に重なり合います。
味わい(Palate)
口当たりは非常に滑らかで、46%の度数を感じさせないベルベットのようなテクスチャー。口に含むと、濃厚なバニラクリームやキャラメル、そして焼きリンゴのような甘みが舌をコーティングします。中盤からは、長熟原酒由来のオークの香ばしさ、シナモン、オレンジピールの心地よい苦味が広がり、驚くほど重層的(レイヤー)な味わいを見せます。
余韻(Finish)
フルーツとバニラの甘みがスッと引いた後、温かいオークのスパイスと、かすかなフローラルな香りが口の中に長く、上品に留まります。
【テイスティング総評】
多種多様なヴィンテージと樽(バーボン、シェリー、フレンチオークなど)が混ざり合っているにも関わらず、味が散らかることなく「アランらしさ(フルーティーさ)」が見事に一本の線でまとまっています。若い原酒のフレッシュさと、長期熟成原酒の深いコクがグラスの中でオーケストラのように響き合う、まさに「奇跡のブレンド」と呼ぶにふさわしい傑作です。
おすすめの飲み方とペアリング
複雑な歴史を読み解く「ストレート」
レムナント レネゲードの持つ、バニラ、フルーツ、そしてスパイスの複雑な重なり合い(レイヤー)を楽しむなら、間違いなく「ストレート」がおすすめです。時間をかけてゆっくりと飲むことで、グラスの中で香りが幾重にも変化していくのを楽しめます。
至高のペアリング:バニラビーンズたっぷりのシュークリーム

今回は、サクサクの香ばしいシュー生地の中に、バニラビーンズがたっぷりと入った濃厚なカスタードクリームが詰まった「シュークリーム」に、アラン レムナント レネゲードのストレートを合わせてみます。
シュークリームの濃厚なバニラとカスタードの甘みを、アランのフルーティーな甘さが優しく包み込み、オークのスパイスが全体をエレガントに引き締める。洋菓子の旨味を極限まで引き出す、至高のデザート・ペアリングです。
アラン レムナント レネゲードをおすすめする方
- アラン10年やバレルリザーブが好きで、さらに「複雑で重層的なコク」を求めている方
- バニラや青リンゴのような、フルーティーで華やかな香りのウイスキーが好きな方
- シュークリームやバニラアイス、フルーツタルトなどの洋菓子とウイスキーを合わせたい方
- 「余剰原酒のブレンド」という、一期一会のロマンチックなストーリーに惹かれる方
まとめ:過去の遺産が紡ぐ、至福のデザートタイム

蒸留所の歴史の陰で、ひっそりと出番を待ち続けていた余剰原酒(レムナント)たち。それらがスチュワート・ボウマン氏の手によって見事な反逆(レネゲード)を果たし、表舞台へと躍り出た「アラン レムナント レネゲード」。
その複雑でフルーティーな甘みは、シュークリームという定番の洋菓子と合わせた時、お互いのバニラ香を極限まで高め合う、想像を超えた至福の時間を演出してくれました。
明日もまた、素晴らしいウイスキーとの出会いがありますように。乾杯。
