「伝統と革新の融合、アイルランドの新たなる星」
アイルランドの首都ダブリンから南西へ車を走らせると、緑豊かなカーロウ州に佇む美しい18世紀の歴史的建造物(エステート)にたどり着きます。ここが、近年ウイスキー業界に旋風を巻き起こしている「ロイヤルオーク(ROYAL OAK)蒸留所」です。
2016年に操業を開始したばかりの新しい蒸留所でありながら、アイルランドの伝統的なウイスキー造りと最先端の技術を見事に融合させています。そして何より特筆すべきは、アイリッシュウイスキーの「3つの異なるスタイル」をすべて同一敷地内で生産できる、アイルランドでも稀有な存在であることです。
今回は、トロピカルフルーツの香りで日本のウイスキーファンを熱狂させているブランド「バスカー」の故郷、ロイヤルオーク蒸留所の歴史と驚くべき製法の秘密について、我が家の長男との晩酌風景とともにお届けします。
我が家の晩酌ノオト:長男と語る、一つ屋根の下の三部作
県外の大学に通う長男が、久しぶりに実家へ帰省してきた週末の夜。リビングのテーブルに、鮮やかなエメラルドグリーンのラベルが目を引く「バスカー アイリッシュウイスキー」を置き、グラスを二つ並べました。
ロイヤルオーク蒸留所の特徴と歴史
18世紀の荘園に誕生した最先端の蒸留所
ロイヤルオーク蒸留所は、アイルランド古来の東部地域(アイルランズ・エンシェント・イースト)にあるカーロウ州に位置しています。
18世紀に建てられた歴史ある邸宅の敷地内に、2016年に建設されました。豊かな自然に囲まれた伝統的な景観を保ちながらも、その内部には最新鋭の蒸留設備とサステナビリティ(持続可能性)に配慮した最先端のシステムが導入されています。
アイルランド唯一?「3つのスタイル」を同一敷地内で生産
ロイヤルオーク蒸留所の最大の武器は、アイルランドを代表する3種類のウイスキーをすべて自社で生産できる体制にあります。
- シングルモルト:大麦麦芽のみを使用し、銅製のポットスチル(単式蒸留器)で蒸留するフルーティーな原酒
- シングルポットスチル:大麦麦芽に「未発芽の大麦」を混ぜてポットスチルで蒸留する、アイルランド伝統のオイリーでスパイシーな原酒。
- シングルグレーン:トウモロコシなどを原料とし、コラムスチル(連続式蒸留機)で蒸留する軽やかで甘い原酒。
これらをすべて一つ屋根の下(アンダー・ワン・ルーフ)で造り上げているため、ブレンダーは自社の原酒だけで理想の味わいを自在に描き出すことができるのです。
シチリア産「マルサラワイン樽」がもたらす黄金の果実
熟成においても、ロイヤルオーク蒸留所は独自の個性を光らせています。一般的なバーボン樽やシェリー樽に加え、イタリア・シチリア島特産の酒精強化ワイン「マルサラワイン」の樽をキーカスクとして使用しています。
このマルサラワイン樽が、トロピカルフルーツやシロップ漬けの桃のような、圧倒的に華やかな甘みをウイスキーに与えているのです。
味わいの核:「バスカー アイリッシュウイスキー(緑ラベル)」
ロイヤルオーク蒸留所の魅力を一本に凝縮した、ブランドを代表するフラッグシップのブレンデッドウイスキーです。
- アルコール度数:40%
- 構成:自社で生産された「シングルモルト」「シングルポットスチル」「シングルグレーン」の3種をすべてブレンド。
- 香り:グラスに注ぐと、パイナップルやマンゴーのようなトロピカルフルーツの香りが爆発的に広がります。続いて、バニラやキャラメル、微かなシナモンのスパイス感が続きます。
- 味わい:口当たりは非常に滑らかで、アルコールの刺激をほとんど感じません。麦芽の自然な甘みと、マルサラワイン樽由来のダークチョコレートやハチミツのコクが舌の上で美しく調和します。
- 余韻:フルーティーな甘みが引いた後、ポットスチル原酒がもたらす温かいスパイス感が、優しく口の中に残ります。
まとめ

歴史ある18世紀の邸宅の敷地で、最新の設備を駆使し、アイリッシュウイスキーの伝統である3つのスタイルを同時に紡ぎ出す「ロイヤルオーク蒸留所」。
そこで生み出される液体は、マルサラワイン樽の魔法によって、誰もが親しみやすい華やかさとトロピカルな甘みを纏っています。
明日もまた、素晴らしいウイスキーとの出会いがありますように。乾杯。
